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岬の兄妹

ジリアン・ウェアリングの映像作品をロンドンのギャラリーで見た。ずいぶん前のことだ。
郊外の家のなかで錯乱した女性が外に出されて救急車で搬送される様子が描かれている。
女性がどうしてそんなことになったのか理由もわからないし、叫び続けて、羽交い締めにされて救急車に押し込まれ絶叫が続く。
最後は緑の芝生と白い家がロングショットで映しだされる、そんな映像だったと記憶している。
とにかく悲壮感が凄い。胸が痛む。この頃のロンドンのアーティストは感情的に訴える作品が多くて、これもそうなのかと思った。
なんというか日本で言うところのザ・ノンフィクションのシーンを切り取ったような感じだ。
作品は終わり、また同じものが流れる。美術館でもどこでもそうだけど映像作品はループになっていて、いちいち誰かがスイッチを押したりしなくてもよいようにリピート設定になっている。
せっかくだからもう一回見るか、と思い眺めていると何か違和感を感じる。
さきほど見たものと微妙に何か違う気がする。
いやそんなことない、と思い三回目を見る。
やはり違う。女性の叫び方や動きが微妙に違うのだ。

「???」

頭のなかが混乱した。
つまりこの映像作品はドキュメントでもなんでもなくて、シナリオがあって撮影されたものだと気づく。
フィクションとノンフィクションの境目に立たされたような妙な気分だった。
映像をそのまま信じてはいけないし、それは誰かの意図によって仕組まれたものだし、そういう意味では全ての映像作品はフィクションなのだとも思った。
よい作品なので20年経ったいまでも覚えている。

さて、どうしてそんなことを思い出したのかというと巷で話題になっている「岬の兄妹」を見たからだ。
貧しさと閉塞感に満ちた作品だ。だから良い、ということではないのだと思う。
これは映画だから何かしらそこに美があったり、作者が伝えたいことがあって、それが何なんだということを見ないと。

ラストシーンは冒頭のシーンの別ヴァージョンが始まる。
つまりそれはずっと観てきた一時間半ほどのストーリーはある一つのフィクションで、また別のストーリーの可能性も示しているようだ。
それが終われば、また別の、また別の、別の、、、。
あの時あぁだったら、こうだったら、違う人生があっただろうか。
人生は一度きりだけれど、映画を見るということは別の人生を経験するようなものだと聞いたことがある。
逡巡しながら板橋を後にした。

by tonpu-2 | 2019-03-07 20:00 | 日常 | Comments(0)
映画ファンとしては映画はぜひとも映画館で見るべきだし見て欲しいとも思っています。
しかしながら周囲にマナーの悪い人がいると鑑賞に集中することができず、イラっとします。
話し声、紙や袋をワシャワシャする音、スマホの光などがどれほど迷惑なのかわからない人が未だにいるのがとても残念です。
シネコンはチケット予約が便利だし、大画面で音響も良いのですけど、上の理由で作品云々以前に当たり外れがあります。
映画は本当はミニシアターで見るのが好きです。本当に映画が好きな人しか来ないような映画館が好きです。
そういう映画館にマナーが悪い人はほとんどいません。

さて、そんな二極化する映画館を象徴するかのような映画を最近見ました。
一つはボヘミアン・ラプソディ。
クイーンの一通りを描いた作品で、とても評判が良いようです。
しかし個人的にはまったくフックがなくて退屈でした。
クイーンは誰でも知っているバンドで、曲はCMでもよく使われています。いちど耳にした声やメロディーは忘れがたいですし、フレディ・マーキュリーの歌う姿も印象的です。
どうしていま、そんな大メジャーバンドのことをあらためて知る必要があるのかさっぱりわからないですし、そもそも映画としてどうなのか。
脚本が通り一遍等な物語で凡庸だと感じました。
バイセクシャルなんだ(知ってる)、彼女とうまくいかない(そりゃそうでしょ)、他のメンバーとの衝突(どのバンドでもあること)、パーティーで乱痴気騒ぎ(金があっていいね)、マネジャーに騙される(事前に気づこう)、ライブエイドに出たい(そんな簡単でいいのか)、など。
クイーンのプロモーションになってよかったのかもしれないですね。

もう一つはヘレディタリー/継承。
妻のすすめで、まったく前情報なしに見ました。
サスペンスとホラーを足して二で割ったような感じで、エンゼルハート、レクター博士あたりの雰囲気にダルデンヌ兄弟やケネス・アンガーあたりをスパイスとしてパッとふりかけたような作品でした。
オチにすべてがかかっていると思いながら冷や汗をかいてスクリーンを見つめました。結果、変に回収せずに、やりきった感がすごい作品でした。
しかしこの作品もシネコンで上映されていて、相当違和感を感じました。
できればもっともっとマニアックな劇場でひっそりと見たいと思いました。
おそらく大ヒットはしない作品ですが、映画としてはヘレディタリーのほうがずっと好きです。大衆娯楽映画と比べるのは間違っているのかもしれませんが。


by tonpu-2 | 2018-12-14 20:00 | 日常 | Comments(0)

チ・ン・ピ・ラ

続いてもう一つ映画の話しを。

「チ・ン・ピ・ラ」。
1984年製作なので、見たのは中学生か高校生の頃です。
当時、ラストのどんでん返しが衝撃的だったことを覚えています。

アウトレイジをはじめ、ヤクザ映画を見ているうちにこの作品のことを思い出して久しぶりに見たくなりました。
残念ながらアマゾンプライムでは見つからなかったためTSUTAYAへ行きレンタルしました。
久しぶりに行くTSUTAYAはずいぶん趣が変わっていて、おそらくネット配信を主軸にするためにかなり商品が減らされており、稼働のよいものか配信しても見られないようなマニアックなものが置かれている、そんな感じでした。

さて、「チ・ン・ピ・ラ」は柴田恭兵とジョニー大倉のコンビがヤクザにもなれず、かといってかたぎにもなれないチンピラたちの姿を瑞々しく描いた作品です。
とくにジョニー大倉が本当に可愛くて、柴田恭兵と仲睦まじく寄り添う姿は涙モノでした。
ヤクザにボコボコにされた柴田恭兵が「俺たちチンピラのプロにはなれないのかな」と路上に横たわって悔し涙を流すシーンは名場面です。
80年代のちょっと浮かれた渋谷の街も今となっては懐かしい風景でした。
そして主題歌がPINKだなんてすっかり忘れてしまいました。収録されているCDは高騰しているため、他のCDをヤフオクで。
主題歌はyoutubeで聴くことができます。

青山真治監督のリメイク版も見ましたが、やっぱりこちらのほうが圧倒的に面白かったです。同じ脚本で、こうも違うのかと思いました。
次は「竜二」「ちょうちん」を見たいと思います。



by tonpu-2 | 2018-12-14 20:00 | 日常 | Comments(0)

東映と言えば

孤狼の血が面白かったので、東映のヤクザ映画を見ようと思っています。
早速「仁義なき戦い」を検索したところ、こんなにたくさん制作されているとは知りませんでした。
恐るべし仁義なき戦い。

なにがなにやらわからないので、とりあえず一番はじめのものを。
深作欣二というと、いつもドンパチやらかしている監督ぐらいの認識しかなく、金子信雄、菅原文太、松方英樹、田中邦衛など昭和の名俳優が活躍している作品をはじめて見ました。
金子信雄は料理番組、菅原文太は朝日ソーラーじゃけん、松方英樹は元気が出るテレビ、田中邦衛はホタル〜という日和った姿しか知らないのです。

さて、作品はというと俳優たちが何言っているのか聞き取れない。広島弁に加えて怒鳴りながら早口で喋るので。
人を殺した次のカットが刑務所の中だったりと展開が早く説明が少ないので、よくわからないことが多い。
それでもヤクザ組織が団体の経済性に重きをおいていくことと、任侠、裏切り、兄弟愛(ウホッ!)など、今のヤクザ映画の原点のような感じだということはよくわかりました。
組長がちょっと情けない感じも。

若い渡瀬恒彦が艶っぽくてよかった。



by tonpu-2 | 2018-05-30 20:00 | 日常 | Comments(0)

スニーカー

なぜだかわからないのですが、スニーカーにはまっています。

昔からスニーカーは嫌いではなかったのですが、それほど執着はなかったので買える範囲のものを履いていました。
当時いちばん人気が高かったのはエアマックス95ネオン。通称イエローグラデと呼ばれるもので、これは入手困難でした。
エアマックス狩りという言葉も流行ったほどで、古着屋では20万を超える高値で売っていました。
かっこいいスニーカーを履いているだけで絡まれて持っていかれるとは恐ろしい世の中です。
ボンタン狩りとかもありましたねー。しかし実際のところ身近な友人のあいだで何かを狩られた人はいなかったので都市伝説だったのかもしれません。
そういえばハイテクスニーカーという言葉もありました。ちょっと恥ずかしい響きです、ハイテク。
テレビで取り上げられたり一般の人も履き始めたとたんにブームは終わりました。流行りってそんなもんです。
量販店のカートに積み上げられて叩き売られているスニーカを見た記憶もあります。

あれから20年ほど経って、いろいろなスニーカーが復刻されており懐かしく思います。
そして昔は高くて買えなかったものでも今ならなんとか買うことが出来るようになりました。
そんなことで手を出し始めたのですが、やはり良いものは人気が高くてなかなか買うことが出来ません。
ネットでは販売と同時に無くなります。店舗では大行列ができ抽選販売がほとんどです。
ツイッターや掲示板では「あの店はたくさん入手する」とか本当か嘘かわからない情報が飛び交っていて、祭りの前夜のような感じで楽しいです。

そんなことで、買うのはよいのだけれど履ききれない状態になってきました。
それに貴重なスニーカーはなんとなくもったいなくて履けません。
必然的に溜まる一方です。


by tonpu-2 | 2018-04-06 20:00 | 日常 | Comments(0)
印象的なことを

「スリービルボード」
署長の手紙を読んで感極まる背後で火炎瓶の炎が燃え盛るところ。
対立していたミルドレッドとディクソンが途方に暮れながらドライブするラストシーン。

「シェイプオブウォーター」
ノーマン・ロックウェルの絵のような、典型的なアメリカの夢が蝕まれていくところ。
美しい妻の鬱陶しさ。壊れたキャデラック。レイシストのダイナー。首を切られて捨てられた子ども。

by tonpu-2 | 2018-03-14 14:57 | 日常 | Comments(0)

2017年の映画

映画が好き!
しかし残念なことにそれほど見ていません。
Amazonビデオに加入したので、映画館で見ることが出来なかった作品もできるだけ見るようにしたいと思います。
さて、そんな私ですが印象深い映画がいくつかありました。
2017年という縛り以上に個人的ランキングに入った作品「ムーンライト」。
そしてまさか続編があるとは夢にも思わなかった「ブレードランナー2049」。
二つとも方向性は違いながらも、ゲイ、レプリカントというマイノリティーを背負いながら生きていく様は共通点があるかも、と思いました。



by tonpu-2 | 2017-12-25 20:00 | 日常 | Comments(0)
かっぱ橋の釜浅商店から「フライパンがご用意できました」と連絡がありました。
注文したことをすっかり忘れていました。妻には二年前に注文したと適当に言いましたが、それほど前ではなくておそらく一年ほどです。
22cmの鉄製フライパンは上手に使えばおそらく一生使えるであろうということ、ひとつひとつ手作りのため作るのに時間がかかること、ほぼ日で紹介されたということで注文が殺到して入手困難というわけです。
扱いがすこし難しく万能というわけでもないのですが、テフロンだと駄目になってしまうような使い方ができます。
煙が出るほど熱くしても大丈夫なので高温で肉を焼いたり炒めものなどに活躍します。
洋食屋さんのようにオムレツやパスタなど自在に使いこなせるようになればよいのですが。

さて普段なかなか来ない、かっぱ橋に来たので良さげなカフェに行ってみました。
商店街から歩いて数分の静かなところにあります。
看板がなくて入口も定かではなく、おそるおそる戸口に向かうと中から店員さんが現れました。
満席だということ、待つのであれば近所だと迷惑になるのでお店から離れてほしいと告げられました。
先にフライパンを買いに行くので大丈夫と答えると、なにやら困り顔で、新しいお客さんが増えて困っている、お店を閉めようかと思っている、知っている人だけに来てほしいなどと話されて、いま思えば「来なくていい」と婉曲に言っていたのかもしれません。
そうこうしているうちに後ろに2,3お客さんが増えてしまい、お客さんの一人がお店に勝手に入ろうとして溜息混じりに止めていました。

なんとなく店員さんとはうちとけた感じになり、携帯番号と名前をメモに書いて、先に釜浅商店へと向かいました。
お目当てのフライパンはちょうどよいサイズで使い勝手は良さそうです。
同じフライパンの小さいサイズを使っています。油揚げを焼いたりベーコンエッグとかちょっとしたものにしか使うことが出来ません。
ついでに金色アルマイト製の両手鍋を買いました。これからの季節、おでんや豚汁などに重宝しそうです。

そうこうしてるうちに席が空きましたと電話が来たので再びお店へと向かいました。
残念ながら目当てのロールケーキは売り切れ。あまり選択肢はなくてチーズケーキを注文しました。
ケーキも美味しいのですが、周りには新鮮なマスカットがたくさんそえられていて盛りつけがキレイです。
居心地もよいし、これは人気が出るよなぁと思いました。
お会計を済ませると先に説明してくださった店員さんはカウンターの中からこちらを見ていたので会釈して退店しました。
お店はいつまであるのかわかりませんが、願わくばずっと続けてほしいです。会員制のような形になったときに備えて今のうちに通いつめたほうが良さそうです。



by tonpu-2 | 2017-09-11 20:00 | 日常 | Comments(0)

おかゆの薬

さて、このブログにもたびたび登場している我が愛猫おかゆですが、軽度のてんかん持ちです。
しばらくは薬で安定していました。

ある日、かかりつけのお医者さんから連絡があり、使っている薬に副作用があるため別の薬に変えたほうが良いとのお話がありました。
早速、薬を変えたのですが、その日からどうもおかゆの様子がおかしい、、、。
食欲が日に々おとろえて一日にカリカリを10粒食べる程度に。
そうしたら久しぶりに発作が出てしまいました。
新しい薬は効き目が遅くて、安定するまでに約三週間かかってしまいます。春の不安定な気候が理由かもしれません。

病院に連れて行き健康診断と血液検査をしてもらいました。
エリザベスカラーを着けられて注射をされると「にゃーーー」と情けない声を上げて、悲しいやら笑えるやらの診察でした。
結果、内臓疾患は無し。薬の血中濃度も安定しているので特に問題はなく、しばらくは様子を見ることになりました。

しかし、食欲減退はさらに進み、大好きだった煮干しを乗せてもササミを茹でても全くの無反応。
いろいろなご飯を買ってきたり、自分で作ってみたのですが全部駄目でなにも食べてくれません。
暗い部屋でジッとしていることが多くなり、本当に心配になりました。

それでも夜遅くに、カリカリを手のひらに乗せて顔の前に近づけると数粒だけ食べてくれました。

どうやら変えた薬が猫にとっては相当不味いらしく食欲不振になることがあるらしいです。
食欲不振程度ならよいのですが、事は深刻だと思い、もういちどお医者さんと相談しました。
以前の薬は副作用があるもののその確率は低いので、元の薬にいったん戻すことになりました。
薬を戻しても食欲が戻らなかったらどうしよう、、、と不安に思っていたら妻から連絡が。
「もりもり食べてウンチもした」、と。

やはり原因は薬だったようで、おかゆはすっかり元気に復活しました。
お医者さんから頂いた(見向きもしなかった)カリカリを美味しそうに食べています。
お風呂場で「おい!水をかけてくれ!!」という要求も復活しました。(おかゆはお風呂場で床にジャーっと流した水しか飲まないのです、、、)
減ってしまった体重もあっという間に戻り、だっこしたときのズシっとした重さが嬉しいです。

この元気な感じも実は薬の効果のひとつだと思うと、なんだかやるせない気持ちになりますが、それでも元気なのがいちばんだと思います。


by tonpu-2 | 2017-04-04 20:00 | 日常 | Comments(0)

Mさんのこと

クレマチスの丘という文化施設が静岡にあり、いつか訪れたいと思っていました。
はじめて知ったのは学芸員の資格を取るために博物館学の授業をとっていたときなので、2010年頃だと思います。
クレマチスの丘には美術館などがいくつかあり、そのひとつにIZU PHOTOという写真ギャラリーがあります。杉本博司氏が設計したということで当時話題になっていました。

しかし少しだけ遠いこともあって、そのうち行こうと思いながら、はや数年たってしまいました。

先日、たまたまIZU PHOTOの画像検索をしたところ、懐かしい顔がありました。
前職でお世話になった方です。Mさんという女性で、私より何歳か年上のはずです。

デビッド・リンチの写真展を開催した頃は巡回先の名古屋会場の担当をされていて、その後東京勤務になり、Mさんと仕事をする機会が幾度とありました。
東京に引っ越しをされるときに不動産屋からの図面を見て、この部屋がよいのでは?と一緒に話した記憶があります。
渋谷に出るなら三軒茶屋がいい、とか。
なぜそんな話しをしたのかはまるで覚えていないのですが、、、年がさほど離れていないことと、もともとの性格でしょう、あまり人を分け隔てしない人だったので気楽に話すことが出来たのだと思います。
仕事の相談もずいぶんしました。

さて、そんな方がIZU PHOTOに居るとわかったので、INFO宛にメールをしました。
近々伺います、と。

すると翌日、別の方から返信があり、昨年の夏に急逝したと書かれていました。

とてもとてもショックで、まだ若いのに、いったいどうしたのかと、、、脱力しました。
仕事が好きな人だったから、きっと毎日忙しくされていたのだと思います。
いまごろ天国で休んでいるのでしょうか。きっと書類の詰まったカバンを3つぐらい抱えて走り回っていると思います。
良い人ほど早く逝ってしまうというのは本当のような気がします。


by tonpu-2 | 2017-03-13 20:00 | 日常 | Comments(0)