柿時代その1

この季節になると上京した頃のことを思い出す。
遅い合格発表と桜の花が、それまで曇っていた頭の中を一掃してくれて、少しだけ未来が見えた季節。
1990年のことだから、もう25年も経ってしまった。

右も左もわからないまま急遽上京することになり、とりあえず住むところを決めなくてはいけないということで一人不動産屋をまわった。
付き添いもなく大東京でただ一人。とりあえず住宅情報誌を買って大学近くの駅を中心に探してみることにした。

はじめに行ったのは祐天寺。
駅から歩いて10分ほどの静かな住宅地で、新築のアパートを建てている途中だった。
一階は大家さんで二階の三部屋を貸すとのこと。
明るくて気持ちのよい部屋だったけれどその分家賃が高かった。
隣には東大生が入居するらしく、東大生と暮らすのも嫌だなと思った。

次に見たのは三軒茶屋の古いアパート。
水回りやトイレが汚れていて陽当たりも悪かったのでパス。
街もゴミゴミしていて空気も悪くこんなところには住めないと思った。

物件情報をパラパラと眺めても気に入るところが無くて、あっというまに夕方になってしまった。

別の不動産屋に行くと雑だけど親切そうなオジサンが担当してくれた。
今日中に決めて帰りたいのだけど・・・と相談すると「今日中途半端に見てまわるより明日一日使って集中した方がよい」と言われた。
それはそうなんだけど泊まるところもお金もなくてゴニョゴニョ・・・とうつむいていると「荻窪の駅前に安いサウナがあるからそこで泊まれ」と言われた。
今ひとつサウナに泊まるって意味がわからなかったので、すすめられた別のカプセルホテルへ向かった。

初めて降りた渋谷は異様なほど人が多くて「今日はなんの祭りか?」と思った。祭りじゃあないんだよ。いつもこうなんだよ。ドゥフフフ。

初のカプセルホテルは思いのほか快適で寝転ぶと丁度視線の先に小さなテレビが付いていた。
他の部屋からはAV女優の喘ぎ声がガンガン漏れていて落ち着かなかったな。
それでも一日慣れない部屋探しに疲れていたのですぐに眠ってしまった。

(続く)
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by tonpu-2 | 2015-04-06 20:00 | 日常 | Comments(0)